超絶AI旋風再び、大化けの卵「エッジAI関連」最強選抜5銘柄 <株探トップ特集>

配信元:株探
投稿:2025/06/21 19:30

―中東リスクやトランプ関税に左右されない、成長株のトレジャーボックスに刮目せよ―

 週末20日の東京株式市場は売り買いともに方向感のつかみにくい地合いとなり、日経平均株価は前の日の終値を挟んでもみ合う展開となった。今週はトランプ関税を巡る交渉の行方に加え、日米の金融政策決定会合のほか英国やスイス中銀なども政策金利を発表する中銀ウィークにあたり、イベントドリブン戦略への思惑が漂ったが、それらをまとめて隅に追いやったのが中東における地政学リスクの潮流であった。

 イスラエルとイランの軍事衝突ではトランプ米大統領が直接介入の可能性に言及し、にわかに中東情勢が緊迫化した。トランプ氏は今後2週間以内に、イランへの軍事攻撃を行うかどうかの決断を下すとしており、マーケットは中東有事に身構える状況を強いられている。ただし、足もとで投資マインドが弱気に傾いているということでもない。週末の東京市場は下値に対しても抵抗力を発揮し、強弱観が錯綜する中で日経平均はプラス圏とマイナス圏の狭間をさまよい続けた。

●中東有事に影響されないAI関連が全軍躍動へ

 中東情勢については当面予断を許さないが、個別株に対する物色意欲そのものは失われていない。プライム市場の値下がり銘柄数はほぼ7割に達したが、小型株指数についてはプラス圏で推移する時間帯も多く、主力株に代わって相対的に時価総額の小さい銘柄群には根強く投資資金が流入した。来週以降の展望として、先物主導で振り回される大型株は視界不良の地合いを余儀なくされそうだが、海外株市場や為替の動向に影響を受けにくい内需系の中小型株には物色の矛先がむしろ強まるケースも考えられる。

 そして、今最も熱いテーマ物色の対象といえば、「生成AI」や「AIエージェント」をはじめとする人工知能(AI)関連株である。最近の半導体株やデータセンター周辺株への見直し機運は、AI用半導体やAIソリューションビジネスに関する再評価にもつながり、関連銘柄にニューマネーが流れ込み始めた。既に米国ではAI周辺の銘柄に株価を数倍化させるなど居どころを大きく変える銘柄が相次いでおり、東京市場もそれに追随する動きが想定できる。今回は、AI全盛時代にハード面からのアプローチで確実に注目度が高まるであろう「エッジAI」をテーマに掲げ、活躍が期待される有望株に光を当てる。

●放置できない生成AI拡大による電力問題

  生成AI市場の拡大が驚異的なスピードで進んでいる。これによって生じる膨大なデータ処理需要が、データセンター建設特需をもたらしているのは周知の通りだ。この場合のデータセンターというのは、いわゆるAIデータセンターであり、内部には大容量のAIサーバーが設置されている。そして、このAIサーバーには同時並行的な演算処理を強みとするGPUが大量に搭載され、膨大な電力消費需要を生み出している。生成AIは既にビジネス分野にとどまらず、我々の日常とも完全に同期した状況にあるが、基本的にクラウドサービスによって提供されるため、今のような強烈な勢いでデータセンターが増設されれば、それに比例する形で電力問題が俎上に載ることは避けられない。

 また、生成AIを利用する側にとってもクラウドサービスの弱点は多々ある。利用者が集中すればレスポンスの遅延が生じるだけで使い勝手が悪くなる。更に、プライバシー保護などセキュリティー面のリスクも無視できない。まして今は、皮肉なことに疲れを知らないAIがサイバー犯罪の原動力となっているような時代で油断がならない。

●エッジAIが生成AI本格普及のカギを握る

 これらの課題を同時にクリアするためには、利用者の端末にAIを組み込むことによって、クラウド依存度を低めることが分かりやすい対処法となる。スマートフォンに代表されるネットワークの末端にある電子デバイス、つまり「エッジ(端)」にAIを組み込むことによって、ユーザー層はレスポンスの遅延や通信コスト低減、プライバシー保護を担保され、ベンダー側にとっても暴力的な電力消費の問題や、インフラ整備の遅れといったリスクを限定的なものに抑えることが可能となる。これがエッジAI導入の基本コンセプトだ。

 スマートフォンなどの端末が学習や推論を行う機能を搭載することについて、技術的には今や高いハードルではない。そうしたなか、近い将来を見据えれば、次世代産業の花形といえる自動運転分野などでエッジAI機能の確保が必須条件となることは自明である。このほか、生産工場や小売店舗などのデジタルトランスフォーメーション(DX)による業務の効率化や高付加価値化を図る過程で、エッジAIのニーズが高まっていくことが予想される。

 総務省によると国内のエッジAIコンピューティングの市場規模は2027年度まで年率27.4%の伸びを示し、27年度には約370億円に達すると試算されている。しかも、これはあくまで短期的な予測だ。世界的に生成AI市場は30年に向けて爆発的に伸びていくことが予想され、これによってエッジAIの市場も底上げされていく構図となる。

 「向こう10年で考えれば、エッジAIとそれによって派生する市場は現在我々がイメージするよりもはるかに大きくなる可能性がある」(証券系ストラテジスト)という指摘もある。株式市場でエッジAIに関連するノウハウや経験値を蓄えている企業は、株価変貌に向けたダイナミズムを内在させている銘柄の宝庫といってよい。今回のトップ特集では、エッジAI関連の位置付けで、ここから目が離せない有望株を5銘柄厳選エントリーした。

●生成AIの裏テーマ「エッジAI」で要注目5銘柄

ABEJA <5574> [東証G]

 ABEJAは自社開発のAIプラットフォーム「ABEJA Platform」を活用し、顧客企業のDX推進を後押しする。政府は国産生成AIの開発力強化に国策として取り組んでいるが、その基盤モデル開発にあたって同社も重要ポジションの一角を担う。業績は25年8月期営業利益が前期比28%増の3億7000万円と回復を鮮明とする見通しだが、増額含みで過去最高更新も視野に入りそうだ。更に26年8月期も2ケタ以上の利益成長が有望とみられる。生成AIの一つであるLLM(大規模言語モデル)の研究開発では業界の先駆者として実績を重ね、LLM関連の大型案件が足もとの業績に寄与している。エッジAI分野でも実力を発揮、同社プラットフォームを通じ「GPT-4」を上回る性能の32Bの小型化モデルをエッジ環境で利用可能にしたことを開示している。

 同社は一昨年6月13日に新規上場したが、IPO直後に1万300円の高値をつけている。当時は期待先行の部分があったものの、今期は売上高の伸びが顕著で現実買いの局面を迎えている。4000円未満の株価は依然として垂涎の拾い場といってよさそうだ。

ヘッドウォータース <4011> [東証G]

 ヘッドウォはAIを活用したソリューションを売り物とし、顧客企業の業務分析や開発、保守・運用、システム改善に至るまでワンストップで対応する。企業のDX支援ビジネスも展開し、自律的に意思決定を行うAIエージェントで需要開拓を進めている。富士通 <6702> [東証P]とはビジネス専用AIアバターで連携する。IoTを活用したエッジAI案件も好調だ。自動運転市場の高成長が見込まれるなか、自動車へのエッジAI搭載で障害物検知や衝突回避などの機能を強化するサービスに傾注している。業績はトップラインの成長が著しい。24年12月期の26%増収、営業利益3.3倍化に続き、25年12月期は売上高が前期比38%増の40億700万円を予想。営業利益は同7%増の3億2800万円を見込むが、来期も大幅増収が想定されるなか、利益の伸びも再び加速する公算が大きい。

 株価はここ急速に下値を切り上げる展開にあり、75日移動平均線を上抜き戻り足を鮮明としている。しかし、1月につけた年初来高値6050円から時価は3割程度ディスカウントされた状態にあり依然として戻り余地は大きい。目先の押し目は強気に対処したい。

ジーデップ・アドバンス <5885> [東証S]

 ジーデップはAI領域の高度な処理を可能とするハード及びソフトウェアの開発・運用を手掛ける。米エヌビディアのエリートパートナーの認定を獲得しており、エヌビディアの最先端GPUをデモ機用に導入するなど積極的だ。エヌビディアのサーバー認証プログラム「NGC-Ready」に認定された推論用エッジデバイスを販売した実績を有する。クラウド開発への顧客ニーズは高水準で商機につなげており、業績はトップライン・利益ともに高成長路線をひた走る。25年5月期は売上高が前の期比50%増の66億1000万円、営業利益は同21%増の8億200万円といずれも過去最高を大幅に更新する見込み。26年5月期も2ケタ増収増益基調が続く可能性が高い。

 株価は今年5月下旬を境に大勢2段上げに突入し、現在は年初来高値圏で強調展開をみせているが、上値の伸びしろは十分に残されている。中長期的には昨年3月初旬につけた高値4150円(分割修正後株価)奪回が十分可能とみておきたい。利益成長力の高さを考慮すれば140億円前後の時価総額は評価不足が顕著というよりない。

トリプルアイズ <5026> [東証G]

 トリプルアイは独自開発の画像認識プラットフォーム「AIZE(アイズ)」を核としたAIソリューションサービスを展開し、店舗向けマーケティングサービスや勤怠管理向けなどに高水準の需要を開拓中だ。また、AIなどに対応した大量データの並行処理を可能とするGPUサーバーも取り扱っている。エッジAI分野への布石も抜かりなく、半導体商社のイノテック <9880> [東証P]と共同で国産のソフトとハードを一体化させたエッジ顔認証「EdgeFACE(エッジフェイス)」を開発しリリースしている。業績は利益水準こそまだ低いものの、トップラインについては24年8月期の88%増収に続き、25年8月期も前期比36%増の59億9200万円を予想。更に26年8月期も2ケタ以上の成長が見込まれる。M&A戦略にも長じ、業容拡大に向けた手段として今後も積極的に取り組む方針だ。

 株価は1000円近辺のもみ合いを続けているが、25日移動平均線を足場に早晩上放れるタイミングが意識される。週足では上値抵抗ラインとして意識されていた26週移動平均線のブレークから、年初来高値1445円を視界に入れる強調展開が見込める。

アステリア <3853> [東証P]

 アステリアは法人を対象に情報システムやクラウドなどソフトウェア開発・販売を手掛けており、顧客企業がノーコードで利活用できるという技術で優位性を発揮している。ノーコードデータ連携ツール「ASTERIA Warp(アステリア ワープ)」は、異なるコンピューターシステムのデータを、簡単かつ迅速に連携できるのが強みで、企業のDX支援で大きく活躍している。株主還元にも積極的で今月13日には発行済み株式数の3.27%に相当する55万株を上限とする自社株買いの実施を発表している。業績は台湾のAI企業Gorilla株式のロスカット完了で、損益の回復トレンドが鮮明となった。26年3月期は売上高が前期比10%増の35億円予想と7期ぶりに過去最高を更新する見通し。営業利益も同9%増の8億5000万円を見込んでいる。

 株価は6月に入って急速に上値指向を強め、直近18日には715円まで駆け上がる場面があった。その後はいったん利食われたが、直近10年の長期タームでみて時価は底値ゾーンといってもよく、中期的に4ケタ大台復帰を目指す動きが期待できる。

株探ニュース
配信元: 株探

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